【サボテン物語】2. 愛した物から遠ざかる日々
サボテンを育てるのをやめ、すっかり暗くなった彼から周囲の女性は離れていった。
いつも冗談を言い合っていた男友達さえ彼は避けるようになり一人でいる時間が増えた。
声をかける人もしだいに減り、新しく知り合った人は彼を少し暗い無口な人だと思った。
窓際の隅の席に半年前とは別人の彼がいた。
「僕はおかしな物が好きで、誰もそれを好きではなかった、僕が好きなものは全然価値のあるものではなかった。でもなぜ..」
彼は孤独の淵で自信を無くしたまま混乱していた。
「僕は、もうサボテンにも灰色の世界にも興味がない、そして未来はただ憂鬱な時間だけが残されているのだ。こんな時間を生きるのが人間なのだろうか?世の中は、他の大勢の人はそれで満たされているのだろうか。」
彼は何かを訴えたかったが、それが何なのかわからなかった。
教えてくれる人は誰もいなかった。
一つだけ確かな事を前に彼はもがいていた、それは「生きなければ」という事だった。