サボテン物語

【サボテン物語】4. それでも新世界は愛(かな)しいか

自分の世界を取り戻し始めた彼だったが、その世界には以前と同じような輝きがあったわけではなかった。明らかにサボテンと彼の間には以前より距離があった。 その距離とは、彼が経験した世の中への失望そのものだったが、それを埋める事を彼はしなかった。 …

【サボテン物語】3. 生きろ

「生きなければ、でもどうやって..?」彼はいつもその事を考えるようになった。 積み重なる日々は彼に何も与えてくれなかった。いや正確には、彼が自分が欲しい物を否定していたのだった。 書店に足を運び、「希望が開ける本」や「あなたは大丈夫」的な類の…

【サボテン物語】2. 愛した物から遠ざかる日々

サボテンを育てるのをやめ、すっかり暗くなった彼から周囲の女性は離れていった。 いつも冗談を言い合っていた男友達さえ彼は避けるようになり一人でいる時間が増えた。 声をかける人もしだいに減り、新しく知り合った人は彼を少し暗い無口な人だと思った。 …

【サボテン物語】1. サボテン好きのイケメンは、いつか悲しみに暮れるだろうか

そのイケメンはとても人気で女性からのアプローチも絶えない為、自分は素晴らしい人間だと思っていたのだ。 趣味はサボテンの栽培で、毎日緑を眺めてはニコニコとしていた。 そのイケメンは自分に好意を寄せる人たちは皆、自分が好きなものを好いてくれると…